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<災害時のお金と手続き その②> これだけは知っておきたい、「り災証明書」

被災後の暮らし再建で、まずやるべきことが[り災証明書]の取得です。申請はどうやる?必要な写真の撮り方は?もらったあとはどう役立つ?そんな[り災証明書]のギモンに答えます。

[り災証明書]がすべての支援のスタートになる

「[り災証明書]は被災者にとって、いちばん大切な書類と言っても過言ではありません。これがないと支援がはじまりません」

と弁護士の永野海さん。

静岡市版・静岡県弁護士会ニュース[災害時Q&A集](※前回コラム参照)を作成した、永野さん。Q&A集でもトップ項目で[り災証明書]が登場する

[り災証明書]とは住家がどの程度の被害にあったか、市が公的に証明してくれる書類のこと。

被災者が市の窓口に調査依頼を出し、市の職員が現地調査。被害の程度を4区分に分けて認定します。持ち家だけでなく、アパートや借家も対象です。

対象は建物。家財、カーポート・倉庫・門扉等は対象外。住民票によらず実際に住んでいれば対象となる。(内閣府資料より)

[り災証明書]は、写真を撮って市に申請

「家を片付ける前に、安全なら被害の写真を撮っておいてください。大規模災害時は市の現地調査が来るまで時間がかかりますから」

―― 申請には被害の写真が必要なんですか?

「申請自体に必要なわけではないですが、証拠をしっかり残しておき後々認定を取得するためにも、被害があった事実がわかる写真が重要です。

具体的な撮影ポイントは、建物の外観/内観の  傾き、ズレ、亀裂、ワレ、剥落などです。
外回りは、建物の傾き・屋根(瓦)・柱・基礎・外壁。
屋内は、天井・床・内壁・建具(扉、窓等)・設備(キッチン、バス、トイレ等)。

余裕があれば家の平面図に損害箇所を落とし込んでください。被害箇所の長さや面積は認定に影響するので、できれば記録してください」

★被害写真の撮り方、さらに詳しく知りたいときは

⇒「建物被害認定調査のトリセツ」 常葉大学附属社会災害研究センター

【熊本地震】では1次調査結果を不服として、再調査を依頼した被災者が約3割もいましたからね」


―― 3割ですか!証拠になる写真をしっかり残しておけば、調査と被災者の認識の食い違いも最小限にできそうですね。再調査で[り災証明書]の発行が延びれば、その間支援のお金はもらえないし、仮設住宅の入居は延びるし、被災者にとってマイナスが大きそうです。


「被害写真を撮っておくことが身を守ることにつながります。もしも被災してしまったら、まず写真、り災証明書の申請だ、と思い出してください」

身の安全確保が最優先。被害写真はスマホでもOK。また[り災証明書]と個人で契約する地震保険では査定内容や目的が異なり、同じ被害認定になるとは限らない。一方地震保険で家財を契約していれば、被害にあった家財の写真も役に立つ

[り災証明書]は、こんなことに役立つ!

「[り災証明書]が発行されると

【被災者生活再建支援金】や【義援金】の、もらえる金額が決まります。

法律に基づく【応急仮設住宅】の、入居条件も決まります。

また 【住宅の応急修理】や

【公共料金・税金・保険料等の減免や支払い猶予】、

被災者向けの低利の貸付【住宅金融支援機構、災害援護資金】にもつながります」


―― いろいろあるんですね。たとえば家が完全に倒壊してしまい、どこかにひなんせざるを得ない場合、どんな支援を受けられますか?


「[り災証明書]で【全壊】と認定された場合ですね。

お金の支援では

【被災者生活再建支援金】の[基礎支援金]で100万円、
追加で[加算支援金]として住宅再建なら200万円、補修なら100万円がもらえます」

全壊や大規模半壊は支援金があるが、半壊の場合、家を解体しない限り支援金はゼロ。対象者が多いうえに解体か、応急修理か、そのまま住むのか迷う[半壊]認定になった場合、注意が必要だ

「さらに当面の生活資金として、最大350万円の貸付が当初は無利子(編注:熊本地震は3年間)で、10年間借りられます。

義援金の金額も、[り災証明書]の区分で大きく変わります。例として、東日本大震災時に石巻市で配分された義援金は

全壊154.4万円 > 大規模半壊 110.7万円 > 半壊 71.9万円 > 一部損壊1.5万円

※住家被害(一世帯あたり)の場合の合計。全壊は津波浸水区域内、大規模半壊・半壊は津波区域内の場合 ※義援金_募金等で広く一般から集められ、被災者に直接配られるお金。災害規模や自治体により金額等は異なる

となっています」


―― 【全壊】のように、被害が大きくなるほど支援金額も多くなるんですね。もらえる金額が具体的に分かってくると、[り災証明書]の認定の重要さがイメージできてきます。

支援制度の利用には、難しい選択を迫られる場合もある

「大規模な災害のときには、お金以外の支援もありますよ。住まいが対象の支援では

全・半壊家屋は 【 公費(無償)で解体 】 してもらえることがあります。

【 仮設住宅 (みなし仮設の公営住宅・借上住宅) 】 に無償で入居できますし、

仮設住宅に入居しないなら 【 応急修理の補助/上限57万6000円 】 も受けられます」


―― 住まいの確保ができれば少し安心できますね。このとき注意する点はありますか。


「たとえば自宅が半壊で、【応急修理の補助】を利用する場合。仮設住宅には入居せず、自宅に住み続けることが条件になります。

【応急修理の補助】の根拠になる法律にそのような内容は書かれていないのですが、過去の震災ではこうした運用がされているのです。

補助上限の57万6000円では、壊れた家のほんの一部しか直せない場合もでてきます」

ひなん所を頼らず自力で自宅生活している被災者が、いかに支援の輪から取り残され苦労しているか、肌身に感じている永野さん。こうした行政が把握しきれない被災者の実情を調査し、制度改定につなげることも、弁護士のできる支援のひとつだという

―― ひとつの支援を受けると、他の支援が受けられなくなる場合があるんですね。知らなかったです。

上限の57万6000円でトイレは直せたとしても、屋根やお風呂が壊れたままでは暮らせないですよね。修理の追加費用を自分でなんとか工面するのか、あきらめて仮設住宅に入るのか。被災して心身ともにギリギリの状態のなか、とても難しい選択な気がします…。


「仕方なく仮設住宅入居を選び、壊れた家はそのままで公費(無償)での解体を待つ、という人が増えていきます。

そうなると住民はバラバラになり、地域で培われてきたコミュニティは消滅。自治体は仮設住宅の建設やその先の維持管理に莫大なコストがかかります。

本来なら直せる家は直し、元いた住民同士で協力して住み続ける方が復興も早まり、地域全体の経済的メリットも大きいと思うのですが…」


―― そういった現実があるのですね。【熊本地震】では半壊が3万4000棟余りあったと聞いています。静岡に大地震が起これば、同じような状況になる人はさらに大勢出てきそうです。


「ええ、今後は被災者の実情にあわせた制度変更が進んでいかなければ、と考えています」

ステッカーを貼る[応急危険度判定]、[り災証明書]や各種支援制度とは関係ナシ

「最後に、被害写真の撮影時は安全をよく確認してください。とくに[応急危険度判定]で 赤(危険)や黄色(要注意)になっている建物の立ち入りは、十分注意してください」

―― [応急危険度判定]というのは、被災家屋に注意喚起のステッカーを貼っていく調査のことですね。

編注:[応急危険度判定]とは_余震等による人命の二次被害防止が目的。建物の倒壊や落下物の恐れ等の“危険度”を、色別のステッカーで掲示する


「自治体が被災家屋を現地調査することは[り災証明書]と同じですが、[応急危険度判定]の結果は[り災証明書]の認定とは関係ありません」

【熊本地震】では静岡県職員も[応急危険度判定]に参加した。明らかに倒壊している家屋は赤(危険)となり[り災証明書]も【全壊】となるが、2つの認定はリンクしていない。写真:静岡県「くらし・環境部建築住宅局」ページより http://www.pref.shizuoka.jp/kenmin/b_talk/h28/0420kumamoto.html

―― [応急危険度判定]が赤(危険)=[り災証明書]も【全壊】 ではない、ということですか?


編注:たとえば、住宅そのものに目立った被害はないけれど、傾いた隣家が今にも倒れかかってきそうで危険な住宅では、[応急危険度判定]で赤(危険)と認定される場合がある。だが[り災証明書]では【全壊】にはならない

「ずれた屋根瓦が道路に落ちそうで[応急危険度判定]は赤(危険)と認定されても、他に目立った被害がなければ[り災証明書]では【全壊】とはならないでしょう」


―― ひとくちに赤(危険)といっても、いろんな場合があるんですね。[り災証明書]では被害が大きければ支援金も増えますが、[応急危険度判定]で得られる支援はとくにない、と聞きました。


「そうですね、そこはあまり知られていないですね」


―― だから、カン違いが起こりやすいのかもしれませんね。2つの調査を混同してしまって、より支援を受けたいために[応急危険度判定]で赤にしてほしい…は誤解なんですね。

<災害時のお金と手続き②> これだけは知っておきたい、「り災証明書」

●[り災証明書]がすべての支援のスタートになる

●[り災証明書]の取得は、被害写真を添えて、市に申請が必要

●[り災証明書]は 支援金受給・公共料金等減免猶予・仮設住宅入居・低利ローン利用など、被災後のお金と暮らしに深く関係する

●ひとつの支援制度を利用すると、他の支援制度が受けられない場合がある。[り災証明書]の【半壊】以下認定は、とくに注意

●色別ステッカーを貼る[応急危険度判定]と[り災証明書]の認定区分は、別のモノ。必ずしも赤(危険)=全壊ではない。[応急危険度判定]により受けられる支援はとくにない

⇒次回、
<災害時のお金と手続き③> 「被災ローン減免制度」
に続きます

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