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<災害時のクルマ活用法 その②> 「車中泊」のキホンを知ろう

先の熊本地震では約4割の市民が車中泊を経験しました。静岡市に住む私たちにとっても、人ごととは思えません。災害時の車中泊、ここだけは知っておきたいキホンを紹介します。

災害時に“車中泊”をするのは、どうして?

大地震が起こったあと。静岡市に住む私たちは、一度は「車中泊」を経験するかもしれません。

それは地震には必ず「余震」があるからです。

はじめの揺れで自宅が無事だったとしても、寝ている間にもっと大きい2回目の揺れがきて自宅が倒壊、押し潰されたら…。そう思うと恐ろしくて家の中では眠れない。とはいえひなん所に行くほどの被害はないし、自宅を離れるのも心配だ…。

そうなると「とりあえず夜は倒壊の心配がないクルマで眠って(=車中泊)、何日か様子をみよう」と考える人が増える、と予想されるからです。

つまりふだんは「わが家は地震に強い家だから大丈夫。車中泊なんて関係ない」と思っていても、一度揺れを体験すると自宅の耐震性とは関係なく、余震の恐怖から車中泊を選ばざるを得ない状況があるのです。


先の熊本地震では、車中泊が大きくクローズアップされました。

ひなん所に入りたかったものの、定員オーバーでやむを得ず車中泊した人が一定数いたものの、報道では「プライバシー確保」や「ペットと一緒にいたい」ため、ひなん所を避け自主的に車中泊する人が多かった点が注目されました。

熊本市のアンケート(※1)によると、一度でも車中泊を経験した熊本市民の割合は39.2%と、約4割にも上ります。

回答をみると「指定ひなん所」にひなんした人は21.3%、「親族、友人・知人の家」は13.2%となっており、最も多く選択されたひなん場所が「自家用車の車中」=車中泊だったことが分かります。


このように車中泊は私たちにとって、“最も身近な、ひなん場所”なのです。

災害時の車中泊 メリット・デメリット

災害時の車中泊には特有のメリット・デメリットがあります。ここではひなん所に行かず、車中泊を選んだ場合を考えてみましょう。

車中泊の メリット

・ プライバシーが保てる居場所がある

・ ペットといっしょにいられる

・ 状況に応じた場所へ 移動できる

・ カギがかかる車内に貴重品を保管できる(窃盗被害対策)

・ クルマの 明かり、スマホ充電器具、テレビ・ラジオ、冷暖房 を自分で自由に使える

車中泊の デメリット

・ 狭く、寝心地が悪いため 眠れない場合も

車種にもよるが、座席をすべて倒しても完全に平らな状態にはならない。ウォークスルーのすき間も意外と大きい

・ トイレ がない

・ 車の大きさによっては 家族全員でいられない

・ 知識がないと エコノミークラス症候群 になる可能性も

・ 暑さ・寒さ が厳しい

・ ガソリン がないと動かない

災害時のガソリンスタンドは売り切れに加え、停電のため設備が動かず営業不可能になってしまう場合も多い。ガソリンは常に半分以上にキープ、を心がけたい

こうしたメリット・デメリットを踏まえた上で「数日なら、車中泊でしのげる」と知っていれば、ひなんの判断も変わってきます。

熊本地震では前震でいったんひなんした後自宅に戻り、翌々日深夜の本震で自宅倒壊等に巻き込まれ、命を落とした方が12名に上りました。これは熊本地震・犠牲者数全体の約1/4を占めています。


地震後に自宅に留まるのかひなんするのか、ひなん先はどこで、いつまでひなんを続けるのかは、状況によって変わります。

残念ですがこうすれば必ず大丈夫、というセオリーはありません。

ですが自宅の耐震性が確かではない人、プライバシーや家族の事情でひなん所生活が難しい人は、車中泊の可能性を念頭に置いておいた方がいいでしょう。


では知っておきたい、車中泊のポイントをみていきましょう。

災害時の車中泊、3つのポイント

災害時の車中泊 3つのキホン

【1】 泊まる日数・人数を調整

【2】 寝床をできるだけフラットに

【3】 寒さ対策をする

全ての座席を倒した車内。マイカーのシートアレンジがどこまでフラットになるか知っていれば、何人まで泊まれるかの見当もつきやすい

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【1】 泊まる日数・人数を調整
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家族で車中泊をするなら、できるだけ1泊~数日程度にとどめたいもの。

もしも軽自動車に家族5人で車中泊となったら、狭い車内では座った姿勢のまま仮眠しかできず、疲れはたまる一方。夜間誰かのトイレのたびにドアを開閉すれば、やっとの思いで得た眠りも妨げられストレスも高まります。

初日はやむを得ず全員で車中泊したとしても、次の日からは体調を崩さない工夫をしましょう。

子どもや年配者は車内に、大人は日中のうちにテントを張ったり身を寄せられる場所を探す等して、車中泊する日数・人数の調整を考えてください。


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【2】 寝床をできるだけフラットに
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座席に寝る場合、シートアレンジを利用してできるだけフラットにします。

出せる荷物は車外へ出し、フラットにしても残る座席の凹凸や窪みは荷物やタオルをつめこみ解消します。さらにその上にダンボールでもベニヤ板でも、あるものを敷いてできるだけ平らにしてください。

ヒトはクッションがきいていても、水平でないと安眠できないといわれている。不安定な体制で寝るのは、たとえ一晩でも相当な疲労につながる

足元は荷物を置いて、底上げした上に脚を伸ばすだけでも身体がラクに。「エコノミークラス症候群」の予防にもなります。

※「エコノミークラス症候群」とは_狭いイスに座ったまま足を下にして長時間過ごすことで、足の血流が悪化。血管中に血の塊(血栓)ができ、肺などに流れて血管を詰まらせ、呼吸困難等を引き起こす

またクルマや就寝人数によっては、荷室(ラゲッジルーム)に寝る場合も考えられます。

荷室はフラットですが底が固く、地面に近いため寒さが厳しいもの。荷物の移動が大変な場合もあるので、状況によって選択してください。


どちらの場合もふだんから荷室に毛布やひざ掛け、タオル、寝袋や銀マット(キャンプ用品)等が積んであれば大いに活躍します。


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【3】 寒さ対策をする
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冬の夜間、冷気を吸収する車内の寒さは想像以上です。

もともと熱しやすく冷えやすい、金属の塊でできているクルマ。四方の窓ガラスからは強い冷気がどんどん車内に入り込んできます。

実際冬季の外気温と車内の温度は、ほぼ変わりません。あたたかいと言われる静岡市でも、気温の下がる明け方にかけて、車内は氷点下になることもあります。


そのため冬季の寒さ対策は必須です。

<寒さ対策のアイデア>

・ ダウン+フリース等で重ね着

・ 足元は 5本指ソックス+ゆったりめの厚手靴下+レッグウォーマー を重ね履き

・ 使い捨てカイロや湯たんぽ(お湯をペットボトルに入れてタオルで巻いても)を用意

・ 重ねた毛布や寝袋ですっぽり全身を包み、体温を逃さない


こうした車中泊のキホンを知っていれば、少しは気持ちの動揺も抑えられ、家族への声掛けや励ましも違ってくるはずです。

「いつか自分も、車中泊をするかもしれない― 」そんな心構えを、静岡に住む私たちは頭の片隅に置いておく必要がありそうです。

※1_平成28年10月熊本市発表 「熊本地震における皆様の状況について」アンケートより

<災害時のクルマ活用法 その②> 「車中泊」のキホンを知ろう

● 車中泊は「余震の恐怖」から逃れるための、最も身近なひなん先

● 熊本地震では 約4割の市民が「車中泊の経験アリ」

● 車中泊のデメリットは「眠れない・トイレ・家族全員は難しい・暑さ寒さ・ガソリン」

● 災害時の車中泊は「日数・人数の調整」「フラットな寝床」「寒さ対策」に注意

【監修】 内閣府火山防災エキスパート/静岡大学 防災総合センター 教授 岩田孝仁