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2017年02月20日

あふれる食の情報に惑わされないために。講演「食べもの情報ウソ・ホント」参加レポート

2017年1月半ば、富士宮市保健センターで食にまつわる講演会が開催されました。講演のタイトルは「食べもの情報 ウソ・ホント ~あふれる情報に惑わされない食生活~」。食品について「あれがいい」「これが効く」という情報が飛び交うなか、私たち消費者は何を気をつければいいのか? 会場は参加者でいっぱいで、関心の高さが伺えました。当日の様子と講演のポイントをご紹介します。

食べ物に、いいも悪いもない。大げさな表現に惑わされず「ふつうに食べる」のが健康の近道

富士宮市役所の健康増進課が主催する食育講演会が、2017年1月中旬に富士宮市保健センターで開かれました。情報群馬大学名誉教授の高橋久仁子氏を講師に迎え、「食べもの情報 ウソ・ホント あふれる情報に惑わされない食生活」のタイトルで開催。12月初めの受付時から参加申し込みが相次ぎ、早々に予約で満席になったということで、食や健康に対する市民の関心の高さが伺えます。


講演の冒頭では、健康増進課からのお知らせとして「富士宮市民は肥満の人が多い」というデータを発表。いきなりの衝撃的な事実! 静岡県内の他市町と比べて肥満の人の割合が高いという傾向があるそうです。これは、他人事ではありません。

もうひとつのお知らせは「第3日曜日=食卓の日」のすすめ。家族や仲間と料理を作ったり、会話しながら食卓を囲む「共食」の良さを実感できるよう、富士宮市では第3日曜日を「食卓の日」としています。共食には、気持ちを癒したり団らんの楽しさを感じる効果が。身体だけでなく心にも栄養を、ということですね。

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さてここからが、高橋先生による講演のスタート。食べ物に関する情報を自分自身で見極めること、がテーマです。講演のポイントとなるのが「フードファディズム(food faddism)」という言葉。フードファディズムとは、食べ物が健康や病気に与える悪影響・好影響を、科学的な根拠に関係なく過大に信じたり評価したりすること。わかりやすく言い換えると、「ありもしない効果を、あるように言う」ということです。


たとえば、【これを飲めばやせる】【これを食べると病気になる】【この食品は体に悪い】。こういった表現は世の中にあふれていますが、実は根拠があいまいだったり、単なる宣伝目的で言っていることも。そのまま信じてしまう前に、これは本当なのか? 大げさなことを言っているのではないか? と疑ってみることが大切なのです。

思い返してみれば、過去にテレビや雑誌で「体にいい」などと取り上げられて流行した食品の多かったこと。ココア、にがり、寒天、納豆、バナナ……。これがいいらしい、効くらしいという評判で消費者が殺到し、商品が店頭から消えてしまうことも。(うっ、自分のことだ)と思ったみなさん、その食品を今もコツコツとり続けていますか? はっきりとした効果はありましたか? 過ぎ去ってみれば、「そんなブームもあったなあ」という感じなのでは。 

高橋先生は「食品会社やマスメディアは、商品を売るため、関心を引くために、都合のよいデータを使ったり、誇張したりすることがある」と言います。

たとえば、「これを食べると○○に良い」といっても、実際にはその食品をそんなに大量に食べられるわけがない、という量だったり。
あるグラフで、「この数値がこんなに下がった」という良い結果が出ていても、実は一方で、不都合な数値は公表せずにいたり。
ほどほどにバランスのいい食事をとっていれば問題はないはずなのに、ふつうの食事では何かが足りないように思わせて、健康食品を買うように仕向けたり。


また、消費者の勘違いを誘わせるような広告表現も多いと言います。

たとえば、コラーゲン入り飲料のパッケージに「飲めば、うるおう」と書かれているケース。何がうるおうのか書かれてないにもかかわらず、これを見た消費者の多くは、昨今広まっている「コラーゲンは肌にいい」という情報からの連想で「この飲料を飲むと、肌がうるおうのだな」と解釈してしまう。コラーゲンに肌をうるおわせる効果があるかどうかの科学的な根拠はここに明記されていないし、パッケージには「肌がうるおう」なんて一言も書かれていないにも関わらず、消費者がそのように読み違えてしまう心理を利用しているのだといいます。

「飲めばスッキリ! 花粉の季節」などの表現も同じです。飲むことにより花粉症の症状が軽くなるんだな、と思うのは消費者の早とちり。何がスッキリするのか、そのことと花粉の季節に何の関係があるのかはどこにも書かれていないんです。こういった言葉巧みな表現が世間にあふれています!ということで、ほかにも多くの実例が紹介されました。

「早合点させるキャッチコピーに気をつけて。行間を読ませるようなやり方には注意。書いてあること以外の解釈をしてはいけません」と先生。自分たち自身も、情報の受け取り手として賢くなる必要がありそうです。


食生活と健康が密接に関係することは事実。でもそれは長い食生活の状況が、長い時間をかけて健康に反映されていくということ。食中毒やアレルギーなどを除いて、今日食べたものが明日すぐに健康を左右するわけではありません。
そのことを念頭におけば、【これを飲めばやせる】とか【これを食べると病気になる】といったお手軽な健康関連情報をそのまま鵜呑みにすることの不自然さに気づくはずです。

最後に先生がおっしゃったのが、「健康に必要なのは運動・休養・栄養。どれも同じように大切で、食事だけに気をつければ健康は万全だと考えることじたいがフードファディズムです」。
そして、「適度の運動、そこそこの健康、ほどほどの食生活をめざしましょう」。食事に関しては、季節や状況に応じて多様な食材を適度な量で食べること。あれをしなくちゃ・これをしてはダメといった情報に振り回されず、冷静かつ「ふつう」の食生活を心がけていきましょう。

平成29年1月14日開催
食のセミナー「食べもの情報 ウソ・ホント ~あふれる情報に惑わされない食生活~」
主催/富士宮市健康増進課

※記事内で紹介している広告キャッチコピーは、実際の商品で使用されているものとは表現の一部を変えてあります。

関連URL

「無駄なく、美味しく、健康的な食生活」を知って食生活改善 セミナー参加記事

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